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2018.8.21ピアノ教室

ピアノ教室のいま・むかし?(2)/ピアノ教室を考えてみる②




時代とともに“ピアノ教室”を取り巻く様々な環境が変化していく中で、今現在、ピアノ教室を運営し50名の生徒さんを預かる一人のピアノ教師として、
■今、ピアノ教室に何が求められる得るのか(ニーズ)
■そのニーズと自分自身の意思・生き方とを、どう繋げていくことができるのか。
を整理しておきたい。

それには意見を持つことが大事であり、その意見を持つためにはなるべく正しい知識が必要。
だからまずは、高度成長期、日本という国においてピアノ教室が流行り始めた頃から現在までの経過を「ピアノ教室のいま・むかし」として、簡単に整理をしてみることにしました。

このブログ上では主に、久保田慶一さんと、江口寿子さんの書籍を参考にし引用をしながら順を追って整理をしていっていますが、必要に応じて他の書籍も紹介し、私見も交えながら進めていきます。

前回は、1964年の東京オリンピック以降からだいたい1990年頃までの、いわゆる高度成長期のピアノ教室事情をかなり大雑把ではありますが、まとめましたので、今回はその続き。

前回の記事ピアノ教室のいま・むかし?(1)/ピアノ教室を考えてみる①






■でも、ちょっとその前に

いわゆる“町のピアノ教師”として長年務めていらっしゃる江口寿子さんが、「ピアノレッスンを変える」シリーズを出版し始めたのは2000年からです。
このシリーズでは江口さんご自身の経験、研究の末見出した指導法などがとても分かりやすくまとめられています。
江口さんといえば「絶対音感教育」がとても有名なので、それについての賛否両論色々な声が聞こえてきます。
ただ、我々もその道のプロであるならば、テレビで映された表面的な様子や、なんとなくの雰囲気に流されるのではなく、一人の専門家がひとつの成果として上げた結果を、冷静に受け止め精査していく姿勢をもっておくべき。と思っています。

さて、どうしても絶対音感教育という側面ばかりにスポットが当たりがちな江口さんですが、実は「ピアノ教育」というものに対し実に様々な角度からアプローチされ、書籍はもちろん、数多くの教本も出されています。
(僕自身は江口さんご本人と直接の接点はありません。)

特に「ピアノレッスンを変える」シリーズの書籍では、「“ピアノを弾く”ためには一体どういった学習が必要なのか」ということがかなり細かく分析され、テーマごとに学習法が紹介されており、僕自身も参考にすることがあります。





ちょっと前のピアノ教室(90年代〜2000年前後あたり)




さて、江口さんの「ピアノレッスンを変える」シリーズ、そのまえがきがなかなか印象的です。

↓ ↓ ↓

▼以下、抜粋
■これまでのピアノレッスンは、まるでこどもたちを苦しめるために存在しているようなものでした。
■日本は世界一ピアノを習うこどもが多いのに、ピアノレッスンをやめていくこどもの数も世界一だといわれているのです。」
■(ピアノの先生たちは)「ピアノレッスンはきびしいのがあたりまえ、レッスンをつづけられないこどもは才能がないこどもなのだ、と信じながら教えているのです。
(※「ピアノレッスンを変える」シリーズ各冊のまえがき より)

このシリーズの初版が出されたのが2000年1月とありますから、著者が指す「これまでのピアノレッスン」とは「1990年代までまでに、一般的なピアノ教室で行われてきたピアノレッスン」という解釈になりますね。
1980年生まれの僕は、80〜90年代にかけて子供時代を過ごしていますから、まさにこの辺りの時代に「ピアノ教育」を受けた世代です。

そういえば、
◉僕が音大生だった頃、同じピアノ科の同期で「ピアノは精神鍛錬だと思う。」と言っていた友人がいました。
その友人のピアノの成績は常にトップ評価で、本人は「試験での点数の取り方をわかっている。」などと言っていましたが、実際にその通りでした。
かといって、子供の頃からピアノを弾くことが決して楽しかった訳ではないし、今も楽しいという感覚とは違う。とも言っており、“楽しく弾く”だけが取り柄だった当時の僕とは全てが真反対でした。(僕の成績は「最高評価」と「まあ落第はしない程度の評価」の間を行ったり来たりしていた。)

◉ところが、そんな僕でも大学3年か4年の頃、近所に住んでいた従姉妹やその友達数人にアルバイトでピアノを教えていた時期があり、彼女たちには相当に厳しいレッスンをしてました。ピアノを“楽しく弾くこと”が好きな僕がです。
もちろん、当時の僕が「厳しさ」の意味をだいぶはき違えていたことは言うまでもありません。
彼女たちからは今でも、冗談とからかい半分で言われます。


「幸太のレッスンで、私はピアノが嫌いになった!!」

そう、僕自身も「ピアノレッスンというものは厳しくて当たり前」だし、「お金をもらってレッスンをするんだから、厳しくしてあげなくちゃいけないものなんだ」という風に強く思い込んでいたんですね。
そして、僕はもしかしたら、本当だったらピアノを生涯の趣味として続けていけるはずだった彼女たちの将来を潰してしまったのかもしれないのです。


■実際問題、僕の教室にお子さんを入会させる理由として、こんな理由が結構多いです。
お母さん本人が昔、ピアノを習っていたがあまりに厳しいレッスンで挫折した。
→もう自分がピアノを弾きたいとは思わない。
→でもピアノ自体が嫌いになったのではない、ピアノを弾くことが嫌いになっただけ。
→だから自分の子供には、ピアノを楽しく弾いてもらいたい。

こういうお母さんにもう少し詳しくご自身のお話を伺うと、
・練習しないでレッスンに行くとひどく怒られた。
・レッスンの場で間違ってばかりいると、先生が何も喋ってくれなかった。
・手を叩かれた。
などなど、僕が子供の頃によく耳にしたことがあるフレーズが次々と出て来ます。
当時の“ピアノ教室あるある”ですよね。


実は保護者のこのような経験は、今現在の子供のレッスンにも少なからず影響を及ぼしていると感じることがあります。
無意識のうちに「ピアノの練習をしっかりしない子供は、ピアノ教室に通う資格がない。」と思い込んでいるんです。

この保護者の思い込みは、元々の「自分の子供にはピアノを楽しんでもらいたい」という目的を見失わせ、妨害することに繋がりかねず、僕としては残念に思うと同時に、なんとかならないものかと、日々働きかけをしているわけです。
・・・この辺りのことは今は深入りせず、機会があればまた改めてまとめるとして、ここでは、以前書いたブログ記事を紹介するにとどめておこうと思います。
「ピアノを止めさせられちゃう」(2018年6月7日ブログ記事)



厳しくすることが正しかった時代?




「これまでのピアノレッスンは、まるでこどもたちを苦しめるために存在しているようなものでした」で始まる江口さんの文章は、当時のピアノ教室業界全体へ向けてのアンチテーゼだったのかもしれないな。という風に僕は感じました。

教師は、やみくもに厳しくするだで頭を使わない間違ったピアノレッスンを今すぐやめて、子供が音楽好きになれるレッスン作りのために頭と労力を使うべきなんだ!
という気概を感じます。

一方で「『努力をすれば成功し、成功しないまでもそれなりに報われる』と多くの日本人が信じていた」という昭和から平成初期までの時代(久保田慶一著「2018年問題とこれからの音楽教育」第2章 「転換期」の日本の音楽大学より)、“子供達に厳しく接する”こともまた“子供への愛情をかけること”でもあったのかもしれないと想像します。
さらに、ピアノの教授法も今ほどは発達していなかったことも考えると「厳しくすること」以外に教師が出来ることが少なかったのだろうか、、、なんて思ったりもするのですが、どうでしょうか。


ピアノ教本が充実し始めた



今は、楽器店に行けばかなりの種類のピアノ教本が手に入る時代です。
著者によってそれぞれにアプローチが違うので、生徒の個性に合わせて教本を適宜選択できるようになっています。

ところが、「明治以降から1990年代まで、日本でピアノ教本といえば『バイエル』だった」と書くのは、ピアノ教本研究家の山本美芽さん。
どんな個性を持った子供に対しても、適用される教本は“バイエル一辺倒”だった時代があるのです。
(バイエル自体が決して悪い教材ではありません。)





山本さんの著書 「ピアノ教本ガイドブック」によると、
「平成元年にあたる1989年以降、国産の使いやすいピアノ教本が次々に登場し、『バイエル』からの移動が起こった。」とあります。

また、母親が自宅での練習をサポートすること、子供を連れてレッスンに参加すること、というようなピアノ教室のかつてのビジネスモデルが機能しなくなっていったのもこの頃からですよね。
じわじわと多様化が進み始めたこの時代、子供を取り巻く環境、また子供自身の個性の違いが意識され始めたのと同時に、様々なタイプの教本が次々と開発されていったというのも頷けます。

そういう意味で、90年代〜2000年の辺りはピアノ教室業界においての一つの転換期だったのだろうと思います。


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「ピアノ教室のいま・むかし」はあともう一回だけ続けてみようと思います。
まだまだ整理しておきたいことがあります。
それではまた。


クルト・ヴァイルを詩う2「スラバヤジョニー」(日本語版)をアップロードしました




世界各地で様々なジャンルの歌手によって歌われて歌です。
日本でも、過去に倍賞美津子さんが歌っていたようで、今も映像で見られます。
でもまずは、我々が作ったスラバヤジョニーから♪
(訳詞も自製しています。)




Coming Soon





ずっと実現させたかったコンサート。 2018年10月、2019年2月。
まずは前者チームがいつものスタジオに集結!!
詳細は間も無く公開。

▼今はまずチームメンバーだけ公開!!
(50音順)
井出壮志朗
織井香衣
川越塔子
清水龍之介
鈴木俊介
谷川瑠美
西本真子
野口幸太
舟橋千尋
前田めぐみ
横山修司



野口幸太ピアノ教室 募集状況








(2018年8月21日現在)
日吉・綱島地区のピアノ教室です。
新規の生徒さんは、あと1名まで受け入れ可能です。
あと1名、お問い合わせを頂いた時点で一旦クローズさせていただきます。

▼当教室のレッスンスケジュールは、「毎週◯曜日◯時」という固定制ではなく、毎月ごとに講師と生徒さんの都合が合う日時を設定しております。
(レッスンのご予約はインターネットの予約システムを利用しています。)
その他詳細につきましては、ピアノ教室のページをご確認の上、お問い合わせフォームからご連絡ください。