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2018.7.15ピアノ教室

特別な支援を必要とする子どものためのレッスン


僕の教室では「特別な支援を必要とする子どものためのレッスン」も行なっていることをホームページ上でご案内しています。
主に、発達障害・知的障害系統の診断を受けたり、「通常のカリキュラムではない方が効率よく学習することが出来るだろう」と判断される子たちが沢山通ってきてくれています。

僕の場合は自分の教室以外にも、小学校の特別支援学級(自治体によっては個別支援学級とも言う)というところで音楽を教えているのですが、ときどきこんな質問をされます。
「特支学級においてどんな授業をすればいいんですか?」
また、ピアノ教師としての同業者の方からも、
「発達障害の(診断名を持つ)子に対してどんな教材を使えばいいんですか?」
・・・・
このブログでは、時々レッスンで取り組んでいることの一部を紹介したりすることもありますが、
取り立てて、「特別な支援を必要とする子どものためのレッスン」においてどんなことをしているか。というのは多分書いたことがないはずです。
なんとか書いてみようと思ったこともあったのですが、無理なんですね。
その理由は・・・。

■特別支援学級でのアルバイト
大学院を修了したての頃、ご縁があって、とある小学校の特支学級で介助員のアルバイトを始めました。
最後の数年間は、年に数日だけ勤務するというような頻度にはなりましたが、かれこれ十年くらいやりました。
途中からはその小学校とは別の学校の特支学級で、音楽の授業を受け持つ講師の仕事も平行し、今は後者の方だけ続いている状態です。

実は、大学院修了直後に介助員のアルバイトをしたその学級の卒業生が、僕の初めてのピアノの生徒さんです。
当時は「ピアノ教室」なんて大々的にホームページを出したり宣伝したりはしていませんでしたが、その子のレッスンをしていなければ、今のピアノ教室はなかったかもしれません。
だから、本格的にピアノ教室を開業した際に、
「特別な支援を必要とする子どものためのレッスン」
というコースを設けることは、僕としては全く自然なことでした。

■実は“特別”という感覚がない
この数年は「発達障害」という言葉が随分と市民権を得てきたように思います。
理解が広まることで、今まで行き届いていなかった様々な点が改善に向かっていくきっかけになるかもしれない。という希望が湧きます。
一方で、この分野のことはまだまだわかっていないことが沢山ある。ということも頭に入れておく必要があります。
仕方のないことですが、現時点においては「発達障害」という言葉だけが一人歩きしている風な様子も感じることがあります。
実際問題、「発達障害」って口に出してはみても、それって一体どんな風なのかよくわからない。という人は少なくないはずです。

僕自身はこの分野の知識を得ようと、色々な本だったり、講習会のような場に参加していたような時期がありました。
そういう基本的な知識が役に立つこともありましたが、結局のところは人と人の関わり合いなんだな。と、徐々に気がついていきました。

例えば、僕たちは皆それぞれ喜怒哀楽のポイントが違いますよね。
違う人同士が関わり合いを持つ以上、それは楽しくもあれば、辛くもある。仲良くもなれば腹も立つ。
その相手が、例えば「自閉症」という診断名を持つ人だとしてもが同じこと。
気が合う子もいれば、衝突ばっかしてた子もいる、だんだんお互いがわかってきて良好な仲に変化してった子もいる。
発達障害とされる子でもスムーズに学習が進んだ子もいれば、特に発達障害という診断がない子でもひとつひとつの課題をこなすのに大変な労力を要する子もいる。
そういう経験の積み重ねの結果、いちピアノ教師・音楽科講師としてのスタンスとして、通常と特支の境界線がいつの間にかなくなっていったのだと自分では分析してます。

特にピアノ教室においていては全て個人レッスンですから、個に応じた内容のカリキュラムをその場その場で常に探ります。
うまくいかない。と思えば、その場ですぐ方針も変えます。
便宜上「特別な支援を必要とする子どものレッスン」という言葉を使っていますが、その子たちだけに特別なことをしているわけではありません。
逆の言い方をすれば、実はどんな子に対しても、どんな大人の生徒さんに対しても、ピアノ・音楽を楽しんで頂くための「特別な支援」をしているってことになります。

冒頭の写真は、入室されて間もなく3年目になる子がここ数回のレッスンで使っている教材です。
当初から多動傾向がかなり強く出ており、油断すると走って部屋から飛び出していきます。
ようやく「だまって座る」ということが習慣づいてきました。
学習するための態勢が整ったとも言えます。
まだ油断出来ないところはありますが、ここまで到達できたら、あとは音楽の世界にようこそ♪

“ひらがな”に強い興味がある彼は、「どんぐりのド」「レモンのレ」「みかんのミ」をマッチングさせていく学習がお気に入りになりました。
次は「鍵盤とのマッチング」に入ろうかと、教材作りを考えているところです。


でもこの学習、彼が「発達障害の診断名を持つ子」だから行なっていることではありませんよ。
彼にとってのベストを僕の目線で探った結果のものです。

■質問の答え
・「特支学級においてどんな授業をすればいいんですか?」
・「発達障害の(診断名を持つ)子に対してどんな教材を使えばいいんですか?」


僕が行なっていることの答えとしては、ひとことで言うと「通常と変わりません。」です。
以前紹介した「調性を巡る旅」も、「今がやり時!」の子はみんなやってます。
それ以上の境界線はありません。
今まで取り立てて「特別な支援を必要とする子どものためのレッスン」について書けないでいたのは、取り立てて書かなくてはならないような内容がなかったからです。