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2018.8.6ピアノ教室

ピアノ教室のいま・むかし?(1)/ピアノ教室を考えてみる①



ピアノ教室を開業して8年目の夏。
教室の小学生たちは、それぞれに楽しかったり退屈だったり、夏休みの宿題に忙しかったり宿題をサボる罪悪感と戦いながらも遊びに夢中になっていたり、、、それぞれに様々な夏を過ごしているようで、話を聞くのもまたおもしろいです。
僕が開業したばかりの2011年は、夏の時点で小学生はまだ1人もいませんでした。
あの時は、“夏休みトーク”とは無縁の夏でしたが、今年は8月時点での小学生の人数は約30名。
そのほか、未就学児、中・高・大学生、社会人、あわせて約50人にまでなりました。

人が50人いれば50通りの生き方、考え方、性格があるものですから、レッスンも一律というわけにはいきませんね。
それに加えて、自分自身のコンディションだって日々違うわけですから、
昨日は良くても今日はダメ、、、、今日はダメだったことが明日は良い。
夜のうちに「これだ!!」と閃いたアイディアが、翌日いざ生徒さんを前にすると、全くお門違いなものに感じられ、敢えなくお蔵入り。
そんなことも珍しくはありません。
パッ!と正解が見えない難しさと面白さを同時に味わいつつ、日々皆さんと取り組んでおります。

そんな具合で、まだまだ道半ばの僕ではありますが、僕の好きなピアノや音楽を通して、こんな風に色々な人たちと関わり合いを持たせて頂けていることは幸せなことです。
集まって下さっている方々に、教室運営のために様々な観点から知恵を与えて下さる方々に、協力をしてくれている家族に感謝をしています。

これまでは、僕自身が生徒さん方、先輩音楽家・教育家の方々、別分野でご活躍されている先輩方々から学び、吸収し、それを自分のものに変えていく。ということだけで精一杯でした。。
でも、これからは「自分が得ていくというだけでは足りないな。」と、思いはじめています。
これまでピアノ教室を運営するために学んできた知識、実践を通して得てきた経験を、ここで一度まとめつつ、これからの指針を再確認していくことが必要な気がしています。
また、そのことが今現在ピアノや音楽学習を考えていらっしゃる方々の参考にでもなればと思います。

ただ、そうは言いつつも、僕がこれをすることで見出したいのは、結局のところ、
「今の時代における“町のピアノ教師”という職業の中に公益性を見出し、どのようにして社会参加ができるものか。」
という点です。
もう少しくだけた言い方をすれば、
■今の時代、ピアノ教室に求められ得るもの
■実際にピアノ教室で可能なこと
の2点と、
■自分自身の意思、生き方
をどう繋げていくことができるものか。
を探りたいのです。

そのためにまず最初に整理、理解しておくべきは「ピアノ教室」という業種自体の過去と現在かな。と思うので、最初のお題は
「ピアノ教室のいま・むかし」としてみました。


むかしのピアノ教室事情







国立音楽大学の副学長で教授の久保田慶一さんは、その著書
2018年問題とこれからの音楽教育
の中で、日本の高度成長期時代は「ピアノがステータス・シンボルだった時代」でもあったとおっしゃっています。

▼以下、要約
■年間ピアノ生産台数が1980年まで上昇し続けたこと。(39万台) 
■クラスの女子生徒のほとんどがピアノを習っていたこと。
■「一億総中流」と言われたこの時代、クラシック音楽を学んだり鑑賞したりすることが、中流階級であることの証でもあった。
■音楽大学を卒業すれば、ピアノ教室を開くこともできたし、高学歴高収入の相手と結婚する道も開かれていた。
■だから、保護者の方も安心して子女に音楽を学ばせることができただろう。
(※第2章 「『転換期』の日本の音楽大学」 より)

→→→
久保田さんのおっしゃるこの状況は、僕自身も様々な方面から聞き知っていました。
ピアノ教室が完全に「売り手市場」だった頃のことですね。

ただ一方では、この時代に実際にピアノ教室で行われていた教育について、こんな批判的なコメントもあります。

いわゆる「町のピアノ教室の先生」として、長年にわたり、ピアノの教育方法を研究され、書籍やテキストも多数出版されている江口寿子さんの著書です。
「ピアノレッスンを変える① はじめましてピアノ 」




▼以下、要約
■30年昔にさかのぼれば、生徒の手を叩くことはめずらしいことではなかった。
■楽譜で頭を叩くこともあれば、椅子を振り上げて投げつけようとする先生の噂話まで耳にすることがあった。
■これは厳しさの意味をはきちがえた決してあってはならないレッスンだと思う。
(※第2章 「きらわれてきたピアノレッスン」より)


→→→
この「ピアノレッスンを変える」シリーズの初版は2000年1月20日となっていますので、その「30年前」というと、1970年頃。
つまり、先の久保田さんが「ピアノがステータスシンボルだった時代」と指摘する時代と同時期だということがわかります。

そしてまた、僕自身も「手を叩く先生」「怒ると椅子を振り上げて追いかけ回す先生」の話は、昔話として随分と聞かされていました。
(ただし、“前者=手を叩く先生”というのは、どうやら今もいるらしい。)


このお二方の文章をもうひとつずつ紹介します。

▼以下、抜粋

◉久保田さん
■ひと昔前なら学生を罵倒し、演奏中にピアノの蓋を閉めてしまうなど、なんとも暴力的なことをする先生もいたそうですが、  〜中略〜   いま、音楽大学の教員になっておられる方々は、おそらくひと昔前の理不尽なレッスンにも耐えてこられてきたような方たちでしょうから、いまどきの多様な学生を指導していて、きっと歯がゆい思いをすることもあるのではないでしょうか。
(※第3章 「義務教育から音楽をなくしてはいけない理由」より)


→→→
ピアノの蓋を閉めてしまう先生は音大だけではなかったようです。

◉江口さん
■宿題の曲ができていないと、小さなこどもに対してでもとてもきびしい口調で叱るのです。
そして、「もう、今日のレッスンは終わり!」といって、ほとんど弾かないうちに、ピアノのふたをバタンと閉めてしまうのです。
(※江口寿子著「はじめましてピアノ」第6章「鍵をにぎる導入期のレッスン」より)


まとめ





世界のピアノシェアランキングの1位は日本のヤマハだということをご存知でしょうか。
では2位はどこでしょう?、、、なんとこれもまた日本のカワイなんです。
では、ヤマハピアノの生産台数が世界トップを達成したのがいつ頃だと思いますか?
ヤマハのサイト「ヤマハピアノのあゆみ」によると、同社のピアノ生産台数が世界1位になったのは1965年のことなのだそうです。
これもまさに、高度経済成長期と重なりますね。
当然、この時期に日本製のピアノ生産台数が伸びたことと、日本中でピアノ・ブームが起こったことは無関係ではないはずです。

ヤマハが現在のヤマハ音楽教室の前身になる教室を始めたのが1952年(ヤマハ音楽振興会 沿革)、当初は主にオルガンを教える教室として発展していったようですが、この時代の都市部付近では、ヤマハの教室から沢山のオルガンの音が聞こえてくるのが普通の光景だったそうです。
当然、ヤマハ製のオルガンを購入した家庭も少なくはなかったはず。

一方でこの時代が、「クラシック音楽に触れている」ということ自体が、ステータスであり中流階級の仲間入りができた証と捉えられ始めた頃であること。
経済の方もぐんぐんと成長していくこの時代、ローンを組んで高額なピアノを購入することも難しくはなかったらしいこと。
うまいこといって、娘が音楽大学を卒業することができれば、高学歴高収入の相手との結婚する道も開かれていたこと。
(音大入学のために費やしたお金はいずれ回収できるものと信じられていた。)

ということはつまり、当時の「ピアノ教室」においての「成功」とは、生徒を音大に入学させることでもあった。
と言えるのでしょうか。

なんとなく、この頃の「ピアノ教室」に求められていたニーズがイメージできますね。

あっ!!そうそう、この頃に子供時代を過ごし、ピアノを習っていた先生方も(今では大ベテランの域)やはり同様のことをおっしゃります。

「私は、(音大に)入って卒業したらお嫁にいくということが大事だったのよ!!」

そして僕はこの先生たちから、
「レッスン中に怒鳴り散らす先生、手を叩く先生、椅子を持ち上げて追いかけましてくる昔の先生たち」
の話をしょっちゅう聞かされていたのです。


いかがでしょうか。現在のピアノ教室を取り巻く状況と比べて・・・・

ほんとはこの後、【1990年代〜2000年前後】から【現代】までのことを整理してみようと思ったのですが、思いの外長くなってしまいました。
(自分でもびっくり。。。)
ここで一旦おしまいにして、次回に続けます。






「マハゴニー市の興亡」オケ部分の抜粋動画を公開



今年3月に公演したlabo opera絨毯座の「マハゴニー市の興亡」
昨年ほぼ一年かけて全編編曲したオーケストラですが、その一部を動画にまとめました。
ピアノ3台、鍵盤ハーモニカ、パーカッション、サックス(一部)の編成です。
5分弱にまとめてみましたので、よかったらご覧ください。


【YOU TUBE動画】
https://youtu.be/xV13e4Sxcp8





Coming Soon





ずっと実現させたかったコンサート。 2018年10月、2019年2月。
まずは前者チームがいつものスタジオに集結!!
詳細は間も無く公開。

▼今はまずチームメンバーだけ公開!!
(50音順)
井出壮志朗
織井香衣
川越塔子
清水龍之介
鈴木俊介
谷川瑠美
西本真子
野口幸太
舟橋千尋
前田めぐみ
横山修司



野口幸太ピアノ教室 募集状況








(2018年8月6日現在)
9月以降について、若干名、新たな生徒さんのレッスンをお受けすることが可能となりました。

▼当教室のレッスンスケジュールは、「毎週◯曜日◯時」という固定制ではなく、毎月ごとに講師と生徒さんの都合が合う日時を設定しております。
(レッスンのご予約はインターネットの予約システムを利用しています。)
その他詳細につきましては、ピアノ教室のページをご確認の上、お問い合わせフォームからご連絡ください。

▼なお、お問い合わせを頂くタイミングによっては、既に定員に達している場合もありますのでご了承ください。