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2018.7.22ピアノ教室

ピアノを弾かなくてもOK!?なピアノ教室


写真は、とあるお子さん(幼児)のレッスン終了後の部屋の様子です。
ご覧の通り、鍵盤ハーモニカを使ってレッスンをしました。
ただしこのお子さん、次回も引き続き鍵盤ハーモニカのレッスンをするかどうかはわかりません。
イレギュラーを受け入れ、今回のベストを探ってみた結果、この方法にたどり着き、生徒講師共に楽しい時間を過ごすことが出来た、という一例です。


“ピアノを弾く”に拘りすぎない



うちはピアノ教室なので、通ってきてくださっている生徒さんたちの“ほとんど”にピアノを教えています。
でも、ピアノを教えていない生徒さんも少しいます。
理由は、今はまだ本人が「ピアノを弾くのがやだ」と思っているからです。
嫌なことを無理矢理やらされても、結局は長続きしません。

・・・余談ですが、僕は3歳の頃から空手を“やらされて”いたのですが、これがイヤでイヤで仕方がありませんでした。笑
行くのがイヤで母親に大抵抗したことも憶えています。
結局、小学生になる前には辞めていましたね。

だから「ピアノを弾きたくない」と言う子には、
「君はピアノを弾かなくていいよ〜」
ということを、わざわざ伝えます。
それ以外の余計なことは言いません。それだけをはっきりと伝えといた上で、ピアノ以外の色々な活動をします。

その活動の内容は本当に様々。
・「野口幸太 お部屋deリサイタル」 〜アンパンマンからドラえもん、ジブリまで〜
・「生伴奏カラオケ大会」 〜新しすぎる曲はムリなのよ〜
・「電車の数当てゲーム」〜新幹線シールとプラレールシールどっちが好き?〜
・「ひらがな書き続け競争」〜丁寧に書かないと減点ね!〜
・「そんなにぬり絵がしたいなら一人でやっててタイム!」〜先生は一人で好きなピアノ弾いてま〜す♪〜
と、音楽とは直接関係ない活動に及ぶこともあります。


もちろん僕は、この教室でひらがなを教えたいわけでも、ぬり絵のコツを伝授したいわけでもありません。(後者は僕が教わりたいくらいです。)
この場所が“イヤなことを無理矢理やらされる場所”ではない。ということをまずは理解してもらうための、僕なりのやり方です。


一年以上ピアノに寄り付かなかった女の子



入室当初から「ピアノには絶対触りたくない。」と、それはもう頑なに「ピアノ拒否」をしていた女の子がいました。
最初の数回のレッスンでは、あの手この手でピアノに興味を持ってもらえるよう働きかけてみましたが無駄でした。
そもそも僕自身、そういう駆け引きは上手くないのです。ポーカーフェイスになりきれないというかなんというか・・・。
この方法じゃダメだ!と悟った時、僕がとった策は「自分を騙す」でした。

どういうことかと言うと、僕自身が彼女に対して「ピアノを弾いて欲しい」と思っている限り、勘の鋭い彼女には全てお見通し。
僕の魂胆がバレバレな以上、彼女は拒否をし続けるだろう。そしてそのうち、この場所が本当にイヤな場所になってしまう。
と言うことは、僕自身が彼女に対して「本当にピアノを弾かなくてもOK。」と思うようになることが最初の一歩なんだ。

まだ開業間もない時期で、「ピアノ教室=ピアノを教えなくちゃいけない」という常識に背ことは、チョットだけドキドキしましたが、「自分を騙すこと」はそれほど難しいことではありませんでした。
(自分が本当に単純な性格なんだな。ということもわかってきました。)

これにより、この女の子は「ピアノを弾かされるかもしれない。」と言う心配をする必要はなくなり、少しは安心して通えるようになったようです。
ただしそれでも、ピアノの半径1m以内には絶対に近寄ることはありませんでした。

“一年以上”と書きましたが実際のところはもしかしたら“二年くらい”かかっていたかもしれません。
正確な期間は忘れましたが、少なくとも一年以上かかったことは確実です。
いったい何がきっかけだったのかはわかりませんが、いつものように“ピアノを弾くこと”以外の活動をしている最中、彼女は自らピアノに近寄ってきて、
「わたしも弾く」
と言い出したんですね。
僕は喜びを隠すことに必死だったことを憶えています。
(「先生が喜ぶから弾く」にはしたくないと思ったから。)
かなりそっけないトーンで、「はい、どうぞ〜」なんて言ったけど、内心は「ヨッシャー!!」とガッツポーズですよ。
(隠しきれていたかどうかはわかりませんが。)

入室当時はまだ保育園に通っていたその女の子も、今では小学校高学年のお姉さん。
女の子はもうこの年代から立派なレディーですね。
会話の内容が少しずつオトナ志向になっていきます。
そしてこの彼女は、今では1回45分のレッスンで6種類のテキスト課題をこなせるまでになりました。
もちろん、彼女がレッスンを楽しむために、もう「生伴奏カラオケ大会」を開催する必要はありません。


どハマりした鍵盤ハーモニカ



冒頭の鍵盤ハーモニカの話。
最近ようやく指の力もついてきて、ストレスが少なくピアノの重い鍵盤を押せるようになってきた男の子。
30分レッスンのうち、ピアノの椅子に座っていられる時間が5分から10分、15分と徐々に増えてきました。

今までは、その時その時の彼の様子を見ながら、僕が即興で作った課題をこなす。
というスタイルでレッスンを行っていましたが、今日からは自分のテキストを買ってもらい、さぁ!いざ本格的なレッスンがスタート!!
というその日に、、、
玄関から入ってくると同時にその場で頭を抱えながら倒れこむ彼。
本人は何があったかは言わないけれど、何かがあったことは明白です。
同行の保護者さんに聞くと、教室に来る道中、本人にとってショッキングな出来事があったのだと。

なんとか玄関からレッスン室に入ってきたものの、顔を伏せて寝っ転がったまま動こうとしない。
話しかけても返事はなし。
この状態になったら、「さぁ、ピアノを弾こう!」なんて声がけすることの方がどうかしてます。(笑)
貝になっている子には、気が済むまで貝にさせておいてあげるのが、結局は解決への近道だった。ってこともあります。

ということで、彼には当分の間自分だけの時間を過ごしてもらうことにして、僕は僕で一人で楽しませてもらうことにしました。
とは言っても、彼だって貝になりながらも、こちらの出方を鋭く観察していることは確実なので、下手なことはできません。
僕はまた得意技のひとつになった「自分騙し」の方法で、
「今日はレッスンをしなくてもOK!!」(=彼を無理にこちら側に誘導するようなことはしない。)
ということにしました。
で、僕が勝手に音楽を楽しんでいるところを見といてもらおうかと。

ただ、これは勘ですが「今はピアノじゃない方がいい。」と思ったんです。
今のこの子にとってのピアノは、まだ「忍耐」という概念とセットになっている可能性が高いからです。
通常だったら「ちょっと頑張ってみよう」という気持ちを、割と容易に作り出せても、今はどう考えても“通常”ではありません。
だから今はピアノとは違うことで、僕が楽しんでいるところを見せたかった。

それが鍵盤ハーモニカだったんですね。笑
それがこの子にはどハマりだったようです!!
僕がちょっと音を出すなり、顔を伏せていたままの彼の意識がグッ!!とこっちに向いたのがわかりました。
もし人間の耳にその機能があったら、耳の向きまでグルっとこちらに向かって回転していたはずです。

そこからは早かった。
顔を覆っていた手をどけ、数秒間こちらを見たのちにむくっと立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。
さっきまでうんともすんとも言わなかったくせに、急に色々と話しかけてきて、なんとか自分もこの面白うそうな楽器を触らせてもらおうとする。
ここからの流れは、もうご想像通りです。笑

ほとんど初体験の鍵盤ハーモニカは彼にとってはとっても興味深いものだったようです。
特に鍵盤を押す手指の操作だけでなく、息を吹く強さによって音の変化がつけられる点が面白かったようで、
「お化けの声」とか「消防車のサイレン」などのモノマネを楽しんだり、ラッキーなことにピアノでもまだ弾いたことのなかった「ファソラシ」の鍵盤位置の学習まで出来てしまいました。

きっと次のレッスンで、僕は「鍵盤ハーモニカをやる?」という問いかけはしないと思います。
でももし、彼の方から「鍵盤ハーモニカをやりたい」と言ってきたら、或いはそういうそぶりを見せてきたら、迷わずやらせてあげようと思います。
僕が責任を持って指導できる範囲のことであれば、好きなこと、興味のあることはできる限り経験してもらいたいと思っています。
僕自身がそうさせてもらってきたように。


実は、空手にも感謝してます




最後になりましたが、僕が3歳の頃から小学校前まで空手に通わされていたこと、今となってはありがたいことだったのかも。と思っています。
空手自体はやっぱり好きではありませんでしたが、僕のこれまでの人生において「好きじゃないのに我慢してやってきたこと」の全ては「好きなことを見極めること」に繋がっていたように思うからです。
全てが恵まれている中に入ると、実は自分が恵まれているということに気がつかない。って言いますよね。
「好きなこと」も同じだな〜って思います。

僕は6歳の頃からピアノ教室に通っていましたが、先生のところに行くのが大好きでした。
レッスンの最後には、ネコ踏んじゃったを教えてもらい、先生の旦那さんとゲームをしたり、
いわゆる英才教育って感じの本格的なレッスンではなかったと思いますが、
教室に行くことが楽しい。って思わせてくれたから続いた習い事だったのかもしれません。

イヤイヤ行かされていた空手は、ピアノ教室に行くことをより一層楽しいものに感じさせてくれていたんだな。と、今だったらわかります。
それに当時すでに60歳を越していたという空手の館長のこと。
道場では最年少だった僕は、この館長に相当に可愛がってもらっていたようで、しょっちゅう抱っこされたいたのは憶えています。
こういうことも今だから感謝できることです。
だから「イヤなこと」と「不必要なこと」は別ものだと思っています。




野口幸太ピアノ教室 募集情報




(2018年7月22日現在)
この数ヶ月間、新たな生徒さんのレッスンがお受けできない状態が続いておりましたが、
9月以降について、若干名、お引き受けすることが可能となりました。
当教室のレッスンスケジュールは、「毎週◯曜日◯時」という固定制ではなく、毎月ごとに講師と生徒さんの都合が合う日時を設定しております。
(レッスンのご予約はインターネットの予約システムを利用しています。)
その他詳細につきましては、ピアノ教室のページをご確認の上、お問い合わせフォームからご連絡ください。

▼なお、お問い合わせを頂くタイミングによっては、既に定員に達している場合もありますのでご了承ください。


鍵盤ハーモニカ練習中!!




今回のブログの中で話題にした鍵盤ハーモニカですが、引き続き練習中です!
ピアノと比べて幅の狭い鍵盤にもようやく慣れてきましたが、やればやるほど色々な技を発見し、実はとっても奥が深い楽器なんだ〜と驚かされます。
この動画で練習中の曲、いつかレパートリーにしたい!!まだまだです。