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2018.5.5ピアノ教室

ピアノ練習アプリ「Simply Piano」について

現在、多数出版されている「ピアノ学習のためのテキスト」は手順や切り口も実に様々で、
「テキスト=カリキュラム」といっても良いかもしれません。
どれも作者の「ピアノ教育」における考え、思想がギュッと詰まっているようです。

ただし、よく出来ているテキストだからといって、それがそのまま誰にでもバチ!っとハマるかというと、それは違うようです。
だから様々なテキストを併用してレッスンを行っていく。というやり方が一般的かと思います。

当教室の場合は初歩の段階では特に、ベースになるテキストを“一冊だけ”選んでおきます。
(もしくは、方向性を見出せるまでは市販テキストを持たない場合も多いです。)
じゃあ、その一冊だけでまかないきれない分はどうするかというと、
その時その時で「この子に今必要」と判断した課題をその場で手書きして渡したり、
既にPC内にストックしてある課題の中から適切なものを選んでプリントアウトして渡す。
という方法で補っています。
(だから紙とインクの消費量が半端じゃなく、プリンターの寿命も短くなる。笑)

・ピアノ練習アプリ(Simply Piano)
さて、そんな補助教材の中に最近新たに加わったのがこれ。



ピアノ練習用に開発されたSimply Pianoというアプリです。
まだ使い始めて1ヶ月半程度で、最後の課題まで到達していません。
そのため、全体像までは把握しきれていませんが、
現段階において理解していることを紹介したいと思います。

↓野口がまとめた動画↓


・音の認識機能について
iPadやiPhone自体のマイクから拾った音を認識するので、
普通の楽譜と同じ様に、タブレットを譜面台に置くだけで使えます。(難しそうな接続作業は不要。)
“音の認識力”については、総じて性能が良いと言えると思います。
ときどき誤認識が起こり、課題を進めていくのに支障が出ることもありますが、
教師が付き添っている状態であれば対処できる範囲内です。
というのも、正しく弾いているのにエラー認識をされたら、初心者にとっては戸惑いも起こることと予想されるからです。

これは僕の推測ですが、倍音も“実際に学習者が弾いている音”として認識され、それが原因で誤認識が起こっている可能性を感じています。
(※ある一つの音を発した際、実はその音以外にも“倍音”と呼ばれる複数の高さの音が同時に発せられているのです。)

・本当に上達を目指すのであれば…
僕たちが楽譜を見ながらピアノを弾いている時、頭の中ではどんなことが行われているかというと、
ーーーーーーーーーーーーーー
「楽譜・音符のを視覚確認」
→「音名とその音を伸ばす長さ、強さを認識」
→「該当する鍵盤位置の認識」「左右どちらの手で、どの指を使うかの決定」「タッチの強さ、速さの決定」
→「指を動かす(鍵盤を押す)運動」
→「出た音の聴覚確認」「鍵盤を押した指を離す運動」
ーーーーーーーーーーーーーー
ザーッと書くだけでも実はこれだけの要素があり、それぞれに対して適切にバランスを保ちながら訓練していくことが理想です。
このアプリは各セクションごとに、音符の読み方や手のポジショニングなどについての動画説明が挿入されますが、
実際の課題に入ってしまえば、単純に楽譜に示されている音の鍵盤を押すだけでOKと判断されます。
つまり、「音符から音名を認識させるための練習」「自分が出した音を聴く=耳を使うことを意識させる練習」などは、やはり別途で行う必要があります。

ピアノは正しい鍵盤を押しさえすればその音が鳴る仕組みになっています。
そのため、例えば自分で音程を作らなくてはならないヴァイオリンなどとは違い、音感が育ちにくい楽器なのです。
(ピアノを弾いてさえいれば自然と音感も育つだろう。というのは誤解です。)
そういった音感トレーニングを放置し続けた先に起こる現象の一つとして、
ある程度の曲が弾ける(指が動く)のに、自分が弾き間違っている音にまったく気がつけない。
というのがあります。
驚かれるかもしれませんが、それで可哀想な想いをしているお子さんはそう少なくはないはずです。
この状態になってから取り戻すのは至難の技です。
全ては我々指導者の責任です。肝に銘じます。

・・・話を戻します。
もし、このアプリを独学用のメイン教材として使いたいのであれば、上記のことをきちんと意識した学習をすることをおすすめします。
例えば、「ただ、該当の鍵盤を押すだけではなく、音名を正しい音程で歌いながら弾く」というだけでも、随分違うはず。
(ただし、歌声が大きすぎると、アプリの音声認識に影響を及ぼす可能性もありますが。)
どんな教材だって使い様、と言えるかもしれません。

・こんな風に使ってます
当教室では、既に習っている音やリズムパターン、テクニックの復習用として、ゲーム感覚で楽しむ。という使い方がメインになっています。
また、動画をご覧頂ければわかる様に、アプリの伴奏に合わせてピアノを弾くという課題も沢山用意されていて、このプチ・アンサンブル体験をみんな楽しんでいます。

・初見視奏の練習
ある程度弾ける様になっている生徒さんは、アプリ内にかなりの数ストックされている楽曲群の中から適切なレベルのものを選択し、初見視奏の練習にも使っています。
バンドやオーケストラの伴奏、歌まで付いている曲もあるので、普通の初見課題では味わえない楽しさがあります。

・きめ細かいカリキュラム
もう一つ素晴らしい点として、カリキュラムが実にきめ細かい。ということです。
例えば右手のド〜ソの五度圏内の課題だけで、ざっと数えただけでも44セクション、課題数にすれば100を越すものと思います。
それらをテンポ良く進められていく様に設計されているのはお見事です。
究極のスモールステップ!

・結論!
どんなに「よく出来ている」と言われている教材にも、強みがあれば弱みもあるわけですから、これがインターネットを介した“アプリ”という媒体になったとしても同じこと。
大切なのは、「ピアノを弾く力、音楽を楽しむ力」ってどういうものなのか、レッスン現場で何を目指すのか。
これらについて、教師自身の考え、信念がはっきりしていれば、もののアイディアはいくらだってひらめいてくるものだと思います。
教材やカリキュラムはあくまで手段です。手段のための手段に陥ることだけはしたくないものです。

ということでピアノ練習用アプリ「Simply Piano」は、他の教材と同様、教材としての強みと弱みをしっかり把握した上で使い方を選べば、レッスンにおいても使っていいもの。と、考え、現時点では当教室においても補助教材の一つとして利用ています。
(生徒さんの中にも、気に入って自宅で利用している方が何名かいらっしゃるようです。)

ところで僕自身は、このアプリで「コード(トレーニング)」のコースを選んで学習を進めています。
一般的にクラシック畑出身者はこの分野に弱いですね。。。僕もその一人。
レッスンに通うことを考えたこともありますが、まずはこのアプリ教材でどこまで習得できるものか試してみたいと思います。


エディット・ピアフ「愛の讃歌」を弾きました






シャンソンの女王、エディット・ピアフの代表曲のひとつですね。
【シャンソン=オシャレで洗練された歌】という、勝手なイメージを持っていた僕は、
初めてピアフの声を聴いた時は衝撃的でした。

身体全体、魂の全てをかけて表現し、
今、ここで死んでも悔いはない!
そう叫んでいるように感じられました。

僕の中で、シャンソンのイメージをガラっと変えられた一曲です。