こんにちは!
ピアニストの野口幸太です!
先週、8月3日(土)カワイ横浜 コンサートサロン「プラージュ」にて、
「ピアノ解体ショー」を開催しました。
開催告知動画
公開したら、
予想を上回る人数のお問い合わせをいただきました。
当初30名としていた定員数を40まで増やしましたが、
それでもお断りしなくてはならない方がいたほどです。
今後は、より大人数でも楽しめるような工夫をしていくことも、
課題の一つかな。と思っています。
でもなにはともあれ、無事に終わりました!
イベントの様子は、レポ動画を作ったので、よければご覧ください。
先にお伝えしますが、、、、
この記事、5,800字!!(^^;;
▶︎最後に、ピアノ解体ショーでやった3台ピアノの演奏を載せておいたので、
読むのキツイ〜〜って人は、そこまで飛ばしちゃってね♪
あは、あははは♪
【A級】のピアノ教師たち
【レポ動画】でも喋りましたが、
僕は、こういう音楽イベントを、
音楽をやっていない子たちにも積極的に参加してもらえるよう、
努めていきたいと思っています。
僕はピアノ教室を経営していますが、
この業界は、とかく閉鎖的になりがちな傾向があります。
■例えば、ピアノの先生たちからは、
「この子はモノになりそうだ。」
というような言葉が、しばしば聞かれます。
“モノになりそう”とはつまり、
この子は将来的に、ピアニストになれる、
或いはそうまでならなかったとしても、
音大のピアノ科を受験できる位のレベルにまでは育ちそうだ。
というような意味で、ほぼ間違いないはずです。
そういう生徒に巡り会ったことで、
先生の方でも奮起して、
持ちうる指導テクニック、知識を最大限に駆使し、
ピアノを上手にすること。
を目的に、邁進するのです。
生徒の方でも、
「僕は(私は)ピアノが上手くなって、
将来音楽の道に行くんだ!」
という本人のメンタリティと一致したレッスンを受けられた時には、
この上なく満ち足りた、ハッピーな時間になるでしょう。
その意味で、
ピアノ教師がピアノ教師たる存在意義を、
世の中に向けて十分に果たしていると言えると思います。
しかし、このような生徒と巡り会えることは稀だ。
という事実も、本当の意味で受け入れなくてはなりません。
■それにそもそも、
プロフェッショナルなピアニストになることだけが、
“モノになる”なんでしょうか。
そしてその素質がある子にしか、
教師としてのモチベーションが湧かないものなんでしょうか。
こうした話題になると、
僕はいつもこの言葉に立ち返るのです。
「教育ってのはいったい何なんだ?」
▶︎▶︎▶︎現在は日本全国、津々浦々、あっちこっちの楽器店などで、
ピアノ教師向けのセミナーが開催されています。
多くのピアノの先生たちは、
そういったセミナーに参加しながら、
指導法や教材などの研究を行っています。
僕自身はピアノ教師向けのセミナーに出席したことはありませんが、
日々のレッスンにおいて「指導法」というものを意識しない日はありません。
ピアノ教育に関する情報収集をしようと思えば、
今の時代、書籍、テキストなどの有料コンテンツは豊富に揃っています。
無料コンテンツだってあなどれませんよ!
YouTube動画は今や、かなり重要な情報源ですし、
Googleブックスを使えば、
有料出版物の中から知りたいポイントだけ検索し、
必要な1ページを閲覧することだってできます。
つまり、お金をかけなくても、
信頼のおける情報を入手することはできるんです。
で、僕の寝室は、どんどん増えていく本に侵食され続けています。。。。
(できれば、、、オシャレな部屋にしたいんだけど。。。)
まあでも、ボクが特別というわけではなく、
そんなピアノ教師、世の中にはいっぱいいるはずです。
→→→いや、中には、惰性でピアノ教育をしている。
って人もいますよ、もちろん。
でも、その人たちのことを、今ここで話題の中に入れる必要はないでしょ?
■それからもうひとタイプ、
僕ごときが今さら話題にする必要のないタイプの先生。
それは、
「ピアノ奏者としてのエリートを育てることをハッキリ決めている先生」
そういう方達は、はっきり言ってもう覚悟が違いますから!
いや、それをいちいち“覚悟”なんて表現すること自体が、B級的な発想なのかも。
ピアノを教えること、エリート級にまで上達させること自体を、
心から楽しんでいるんですよね。きっと。
そういう人のところには、そういう人が集まりますから、
寄ってくる生徒たちの、ピアノに対する精神の持ち方だって違います。
例えば、コンクールの審査をすると、
もうハッキリわかりますよ。
ステージに登場した瞬間から、
別格なのがバンバン伝わってきますから!
■でね!
ピアノ教師としての価値観から見た時に、
この“エリート少年・少女”こそが、素晴らしい生徒であり、
また、そういう生徒たちを多く輩出する先生こそが、
A級の先生!だったんです。
・・・今までは。
でも、もう間も無くその価値観は終わります。
というかそもそも、エリート少年・少女を多く育ててる先生自身は、
そんな風に偏った価値観は持っていないはずなんです。
なぜなら、そういう先生は、
“生徒のピアノ上達”・・・の、更に向こう側を見ているはずから。
つまり、
彼・彼女(生徒)をひとりの人間としてどう育てるか。
【A級】と呼ばれる指導者の一番の興味はここなんです。
その手段として、
「ピアノをエリート的に弾けるようにするためのプロセスを経験させること。」
を選択した教師たちなんだ。
と、僕は思っています。
時代は変わる
ピアノ(音楽)教室に対する社会的ニーズは、
ちょっと前の時代だったら考えられないようなものになっています。
先ほど書いたような、
「エリートピアノ少年・少女」を求める人たちは、
ゼロにはならないかもしれないけれど、
減っていくことは確実です。
■余談ですが、音楽大学進学希望者の減少だって同じ。
・・・というとすぐに少子化の話題に繋がりそうですが、
音大に関しては、少子化問題の理論はちょっと当てはまらない。
なぜなら、【音大進学者人口の減少率】は、【少子化による子供人口の減少率】を上回っているから。
つまり、(今の体制の)音大に、魅力を感じる子供が少なくなっている。ということなんですよ!!
■先ほど、(事実を)本当の意味で受け入れなくてはいけない。
と書きましたが、僕は「受け入れる」というのは、
嫌な事実を、嫌な感情を持ったまま無理して自分の中に取り込む、、、
ということとは違うと思っています。
起こっている事実の見方・捉え方を変えて、
自分自身が気持ちよく前に進めるように工夫を施すこと。
と、考えます。
(そもそも、ほとんどの物事は、
それ自体に良いも悪いもないんだから、
どう捉えて、どう進むか。でしょ?)
■実は、ピアノをエリート級に弾ける子たちほど、
将来「音楽を仕事にすること」をそもそも視野には入れていません。
音大進学なんてもってのほか!
と言う人までいるくらいです。
ひと昔前だったら考えられない変化です。
■ボクの教室の話をしましょう。
ボクの教室は、今現在60名の生徒さんが通ってきてくれています。
月曜に外部講師の方が来てくれているとはいえ、
生徒数だけから見れば、個人教室としては繁盛している方です。
そんなボクの教室の生徒さんたちの中にはね、
▶︎自宅にピアノがない=自宅での練習が不可能
▶︎レッスン中、ピアノを一回も触らない
▶︎なんなら、音楽的な活動が何一つできない
という生徒さんも少なくないんですよ。
■ピアノ教室系雑誌では、
「いかにして自宅での練習を促すか」
が、常にトップ記事になっている中(←それだけ、多くの教師から興味が持たれているということです。)、
そもそも、「自宅で練習をしない」という前提で、
レッスンをスタートする子たちが少なくないんです。
これは、
自宅では練習しない(できない)けど、
ピアノには興味があるから、習ってみたい。
という新しいニーズです。
この場合、ボクが知恵を絞らなくてはならないのは、
「いかに自宅で練習させるか」ではなく、
自宅での練習なしという条件で、
いかにピアノのレッスンを成立させるか。
ということになります。
▶︎その一方で、
昨年はボクの教室からも、音大に進学した生徒がいました。
また、音大に行くかどうか別として、
「音大進学程度には弾けるようになりたい!」
というメンタリティでレッスンに臨んでいる生徒もいます。
■なんでボクがこんな風に、
全く種類の違う色んなモチベーションの人たちとのレッスンを
楽しめるかというと、簡単です。
ボク自身が、
ピアノを弾けるようにすることを、
教室の重要ミッションとしていないからです。
簡単な言葉で言うなら、「ピアノは目的じゃなくて手段」ということです。
▶︎回りくどい言い方をすれば、
・・・「ピアノ指導者としてプロのスキルを持っているボクが、
決められたレッスン時間を、
最大限に満ち足りた時間とするために、
時として、プロ教師としてのスキルを駆使する。」
です!
■ひとりの人が成長していく過程で、
何がどう影響して、それがどんな素晴らしいことに結びついていくかなんて、
誰にもわからないでしょ?
それからこれは嫌な言い方に聞こえたらごめんね。
でも言います。
いちピアノ教師が、生徒とは言え、
他人の人生に責任を持つことなんて出来ないじゃん。
だからこそ、他人のボクが勝手に人の価値観をコントロールしようなんて思わない。
ただ一点、目の前のこの人(生徒)が幸せになることだけを思っておく。
できるだけ強く。
(あ、幸せの種類まで限定しちゃダメっすよ。)
で、その“幸せ”に近づくために、
“いまこの時”にボクがプロのピアノ教師として提供できるものはなんだろうか!
と瞬間、瞬間で考える。
そして種をまいてみる。
まいた種がどう芽吹いてどう育つか、
或いは一生芽を出すことはないのか、、、、
なんてことまでは考えなくていい。
しつこいけど、なにが、どういうきっかけでプラスに転じるかは、
本当のところは、わかんないんだから。
つまり、
もう、音楽のための、(民間)音楽教育ばかりを追いかける時代は終了!
ってことで!!
偉そうに言いやがって!て思う方もいるかもしれません。
でもボクはまだA級の教師にはなれていません。
まだB級です。
なぜかというと、まだ意識しないと出来ないことが多いから。
目指す境地は【無意識有能】、、です!!!
【注!】
そうそう!!!
こんなことを書いたからといって、ボクはどんな人とでもオールマイティにレッスンができる!
という訳ではありませんよ!!
お付き合いすることが難しいだろうと思う方には、レッスンをお断りします。
それから今までは良かったけど、これからはお互い違う道を歩きましょう!
ということもあります。
最後に、「何がどう発展するかわかない」という例を一つ示して終わりにしますね!!
跳び箱を作る楽器メーカー!?
これでやっと「ピアノ解体ショー」の話に戻れる!笑
■今回、ピアノ解体ショーで多大なご協力を頂いたのは、カワイ横浜(店)さん。
世界屈指のピアノメーカーとして知られるカワイの正式な社名は、
株式会社 河合楽器製作所です。
▲社名のところクリックすると会社概要にリンクするから、
良ければ見てみてください。
楽器メーカーである「河合楽器製作所」の事業内容の中に、
「金属加工品及び木工加工品の製造仕入並びに販売」
とあることに気がつきましたか?
具体的には跳び箱や、卓球台、ルームランナーのような健康器具などです。
■これ、楽器と関係ありますか?
ないですよね。
じゃあ、どうして楽器メーカーであるはずの河合楽器製作所が、
楽器以外の製品を作ることが出来たのかというと、
・・・木材や金属の加工技術があるからです。
ピアノは「木の精密機械」とも呼ばれるほど、木の選定、扱いが良し悪しを分ける楽器。
カワイは、そんなピアノ作りに長年取り組んでいるうちに、
ピアノではないものも作れるようになり、しかもそれを商品化し、
世の中に流通させる力をつけたということです。
■そんなカワイの創立者、河合小市さんは、11歳の時にヤマハに入りました。
技術者として天才的な才能をもった小市は、
山葉寅楠氏(ヤマハ創立者)の元、13歳で、
国産第一号のアップライトピアノを完成に導きました。
その後、独立し「河合楽器研究所」(現在の河合楽器製作所)を創立。
自社ブランドのピアノ作りに邁進していきます。
今ではヤマハと並んで、世界のトップシェアを誇るピアノメーカーですが、
小市がピアノ作りに熱中していたその頃、
「俺は将来的には、跳び箱や卓球台を作って、学校の体育教育に貢献するんだ!!」
なんて思っていたと思いますか?
或いは、小市の周りの人たちの中に、それを予想していた人はいたんでしょうか。
■現在、カワイピアノのことは知らなくても、カワイの跳び箱なら使ってる。
っていう人もいるかもしれません。
カワイピアノを弾いたことはないけれど、
日々のトレーニングに、カワイのマシーンを使っているスポーツマンもいることでしょう。
■「ピアノ解体ショー」でググってみてください。
実はこのイベント、特別に珍しいものではないんです。
毎年、あっちこっちで開催されている。
でも、集まってくのは、
ピアノを習っている子たちが多い雰囲気。
・・・・ま、それは、当然のこととは思います。
でも、本当はもっと色々な子たち、
ピアノや音楽には関心はなくても、
機械、ものづくり、音(音響)に興味のある子たちにも、
是非体験してみてもらいたい。
▼例えばこの実験なんか、
未来の“超上質なスピーカー開発”!
のヒントになったりとかして!
▼▼▼▼
これがピアノの実力💪
— 野口幸太 (@NoguchiKota) August 7, 2019
【ピアノ解体ショー】実験の一コマ🎹#カワイ#カワイピアノ#shigerukawai pic.twitter.com/u57tHRpGIv
なんてね!!
でも本当はたぶん、ボクなんかがこうやって想像する範囲の外側から、
ポーン!!て、面白いことが飛び込んでくんだよね。
だから、我々、大人はただ黙々と、楽しみの種を撒き続けることにしましょう♪
感謝!!
今回、ピアノ解体ショーを開催するにあたって、ご尽力してくださった、
▶︎和田弘樹さん(カワイ厚木 店長)
▶︎調律師のカトウさん。
▶︎カワイ横浜のみなさま方。
そして、お楽しみコーナーの「3台ピアノ演奏」を、
快く引き受けてくださった、ピアニストの
▶︎織井香衣さん
▶︎谷川瑠美さん
そして、集まってくれた皆さん!
本当にありがとうございました!!!!