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2017.12.11ブログ

電子楽譜?紙楽譜?・・・本番で使うのはどっち?

同業の仲間うちでもほぼ共通の悩みとしてよく話題になるのが「楽譜」の整理です。
放っておくと段ボール1箱分、2箱分・・・・と、次々と増えていき、置き場所がなくなっていく…………ってやつです。
僕も同じ悩みを抱えていた一人ですが、随分前から使用済みの楽譜はどんどん処分していく。という方針に切り替えました。
その代わり、捨てる前にスキャンなどをして全てPDFで保管しておくことを条件に・・・。

そんなわけで、今現在僕のPCの楽譜フォルダの中はこんな感じになっています。

例えばオペラの譜面を探したい場合は、フォルダを【楽譜→歌→声楽→opera】の順に進んでいくと、各作品のスコアだったりアリアの楽譜にたどり着く。といった感じです。
当初の目的は主に2つ。

①自分が必要な時に紙に印刷して使う。
②自分が(コンサートの)企画者だった場合、プレイヤーさん達にデータで送る。


こんな時期が5〜6年続いていましたが、2年前の秋からは更に3つ目の用途が加わりました。

③タブレットで楽譜を使う。

要するにデータ化した楽譜(或いはデータのまま購入したり送られてきた楽譜)を、紙に印刷して使うのではなく、そのまま電子楽譜として利用する。という用途です。
(僕の場合は「iPad Air2」(9.7インチ)で、利用した楽譜閲覧用アプリは「pia score」。)

ただし、当時はまだ「本番で使う」という選択肢はありませんでした。
主な理由。

【理由1】
A4版と比べて画面が小さいので、いわゆる「普通の精神状態」ではない本番時に、音符の小ささがどう作用するかわからない。

【理由2】
自由に書き込みをするのが難しい。
※手書き機能はあるにはあるが、指で謎って線を描ける。って程度で、瞬時に細かい文字を書き入れていくのは、ほぼ不可能と思われた。

【理由3】
電子機器であるが故のあらゆるリスクに対する回避策がほぼゼロであること。
例)
・バッテリー切れ。
・落として壊す。
・突然のシャットダウン
・機器のフリーズ、何かの不具合でページが飛んでしまう。
など。

上記のことから本番での使用は全く考えていませんでした。

ただしメリットも沢山ある訳で、何と言っても嬉しいのは楽譜の軽量化でしょうか。
例えばオペラの稽古場で弾く!といった場合、僕の場合は2種類の楽譜を用意します。
1つはオーケストラがピアノ伴奏にアレンジされた「ヴォーカルスコア」と呼ばれる楽譜。
それと、ピアノ伴奏に編曲される前の元々の形が書かれている「オーケストラ譜」。
試しにプッチーニの《蝶々夫人》をやる!となった場合「ピアノ譜」のページ数【363ページ】、「オケ譜」は【483ページ】。

二冊合計の厚みは5センチ強。
これを常に持ち運ぶのは大変でした。
一方タブレットの方はというと、今現在僕が楽譜のメインとして使っているiPad Pro(12.9インチ)で6.9ミリ。


他にも楽譜を電子化することで得られるメリットは、色々と想像が付くことと思います。
という訳で、この2年の間は本番時には紙の楽譜を使うけれど、サブとして適宜電子楽譜を使う。という格好で活動をしていました。

さて、サブとはいえ2年間「電子楽譜」を使い続けて気づいたことがあります。それは、

本番で使わない【理由3】で書いていた「電子機器」であるが故のリスクについて、これまで一度も遭遇したことがない。
ということです。

少なくともiPadにおいては、そのような事故が起こる確率は低く、今現在のところ事故発生率は「0%/2年間」。
・・・であるならば逆に、本番で紙楽譜を使う際のリスクのことも考えて、両者を照らし合わせて再検討してもいいのかも?
という発想になりました。
というわけで、僕がこれまで経験したことのある紙楽譜であるが故の困った出来事をリストアップしてみます。

ケース1:風で勝手にページがめくられる
稀にステージ上では得体の知れない“風”が吹き始めことがあります。
リハの時に同じ風が吹いていれば対策のしようがあるのですが「本番時に限って吹き始める風」というのがあるんです。
その風が紙の楽譜をヒラヒラと揺らし始め、それだけでもかなりストレスになるのですが、そのままページをめくってしまうということもありました。

ケース2:譜めくりの音がうるさい。
自分でめくるにしても、譜めくりさんにめくってもらうにしても、多かれ少なかれ紙のこすれる音が発生します。
演奏音が最弱音であったりした場合、意外とこれが目立ったりもして、、、
また、テンポが速い曲の場合は、できる限り素早い譜めくりが必要なため、その分勢いも増す。結果、譜めくり音が目立ってしまう。ということもあります。
(※電子楽譜の場合は、画面をスワイプすれば譜めくりができるのでほぼ無音です。)

ケース3:暗くて見辛い
特にオペラなどの舞台でピアノを弾く際、演出上の面などから、ピアニストのために当てる光量をセーブされることがあります。
少しでも全体を暗くしてお客さんに観せたい。という意図がある時などです。
もちろん、そういう場合には事前に然るべき相談がされるものなのですが、同じ舞台の一員としてはできるだけ協力したいとも思います。
結果、ほんの僅かな灯りの中で楽譜を見なくてはならない。というシチュエーションもあります。もちろん、見にくいです。
電子楽譜(iPad)においては、その灯りがゼロでも自前のバックライトで十分仕事ができます。
(※但し、上記は譜面灯のことを言っており、鍵盤を照らす手元灯りはゼロではいけません!!)

いかがでしょうか。
上記はいずれも「イレギュラー」なことではありますが、それを言うのなら「電子楽譜のリスク」だって同じこと。

更に、近頃iPadは12.9インチと、かなり大きなサイズの機種が出てきている。
電子ペンを使えば、結構楽に書き込みができるらしい。
しかも、クラウドを利用すればPC内の楽譜を自由に出し入れできる。


と言うことで、この秋から電子楽譜の使用範囲をグッと!!広げ、先日演奏した二回の本番は、紙楽譜ではなくタブレットをもって臨んで参りました。

但し、まだまだ未知なことでもあるので、万が一の故障や不具合に備え、二段階の対策をしておきました。

1.もう一台のiPad(小さい方)と楽譜を同期させて、いつでも代われるようにしておく。



2.タブレット上で書き込みなどをしている楽譜をそのまま印刷して、最終的には紙楽譜で対応!
結局、最後は紙です。笑
じゃあ、最初から紙でいいじゃん!と言う声も聞こえてきそうですが、、、。

結果的に、今回は大きな問題は起こりませんでした。
但し、今後も同じようにいくと言う保証はありませんから、まだまだ未知です。

また、今回電子楽譜を使ったコンサートはどちらもMCをしながら演奏をしていくタイプのもので、万が一機材のトラブルがあったとしても、それすらも話のネタにして進行をしていけそう。と判断したものでした。
そういったことが通用しなさそうな場では、今後もしばらくは紙楽譜を選択していくかな。と思います。

ちなみに、僕は現在はiPadでの利用をしていますが、楽譜専用のタブレット機材も既に発売されはじめています。
また、楽譜閲覧用のアプリも様々開発されてきているようです。
不安な点もまだまだありますが、次々と開発されている現状を見る限り、今後も無視しきれない道具でもあるかと思います。

以上、電子楽譜に対する今現在の僕がとっているスタンスでした。
電子楽譜について検討をし始めている方の参考になれば。と思い、ちょっと長文になってしまいました。
僕自身もこれからもこの道具との付き合い方を探して行くつもりでいます。


リベラ「彼方の光」を弾きました







原曲は正に天使の歌声!のボーイソプラノですよね。
心が洗われるような歌声ですが、
残念ながら僕には出せない声なので、ピアノで弾いてみました。